中村かあき

部屋とワイシャツと

彼女と今朝大喧嘩をした。そもそも昨晩も酷く喧嘩をしてしまい、一家揃って負けず嫌いな性格の僕は喧嘩のときやけに高圧的になる。そんな僕に嫌気をつかせたのか、彼女が放った「別れたい」の一言に胸を絶望のコンクリートに引きずらせながら今日は8時間働いた。夕方に職場を上がり、就職祝いにと家族から渡されたお気に入りの腕時計の電池交換を、二駅離れた街にある大きなショッピングモールの時計修理屋に頼み、今はファミレスの酷い匂いのする喫煙スペースでこれを書いている。

そもそも彼女との出会いはもう数年前になる。当時通学していた学校で軽音楽部に所属していた僕は、少しだけドラムやギターの演奏ができ、部内ではブイブイ言わせていた。はたから見たら相当いけ好かない奴だったと思う。そんな僕に2人目くらいに出来た後輩、それが今の彼女だ。

当時の彼女との関係はなかなかに素っ気ないものであり、周りからの軽視の目線を無視しながらの付き合いも2年の月日が経とうとした頃、僕の卒業が近づいていた。部内で天狗になっていた僕の彼女に対する言動は日に日に丸みを失い、気がついた時には良く言えばありのままを曝け出していた自分がいた。そんな僕に彼女は何故か若干の好意を抱いていたらしく、それに気付いた卒業後に交際を始めた、という経緯になる。

100歩譲ってもバンドマンの彼女だ。生活が彼女の望ましい形であったかは定かではない。交際後僅か数ヶ月で始めた計画性のない同棲生活の中で、少なくとも小さな不満が積み重なっていたのは事実。それは僕がバンドマンだから、という一言では済まされない程、僕個人の問題だった。

そんなどうしようもない僕に何度もチャンスを与えてくれた彼女との待ち合わせ時間も、そろそろになる。彼女にどう頭を下げるのかをまだ決めていない。ただ何が言いたかって、こんなだらしない自分を不特定多数の閲覧者に晒すベーシストが居ても面白いんじゃないか。

2017/01/12(木) 21:09:00

中村かあき


魔法のiらんど

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