Raven Emperor―episode zero―

age16 暁  未熟な心

本当の恋を知らなかった彼女が、おままごとのような恋愛をしていた頃のお話。







キーンコーンカーンコーン・・・チャイムの音に一斉に生徒たちが動き出す。

ガタガタと揺れる椅子と机の音に、うつ伏せていた机から顔を上げた。


「う~ん、よく寝た」

ふぁぁ・・・とあくびをしながら手を伸ばして伸びをした。

忙しなく帰り支度をしているクラスメイトを見て、もう放課後なのだと知る。

凝り固まった首をコキコキと鳴らした。



「暁、また寝てたのか?」

教室に迎えに来た伊吹(イブキ)が苦笑いで私を見下ろした。

薄い茶髪で綺麗な二重の今時のイケメン。

田舎町では珍しく垢抜けてる。


「仕方ないでしょ、眠いのよ」

「昨日、バイト遅かったのか?」

「ん、そうでもない」

目を擦りながら答える。


あの家に居たくなくて始めたバイト。

レンタルビデオ店は22時まで働けるのよね。


「あんまり無理するなよ」

ポンポンと私の頭を撫でる伊吹の手は大きい。

「ん」

「ほら、帰ろうぜ」

「了解」

机にかけてあった私の鞄を持ってくれた伊吹に頷いて立ち上がる。


半年前から彼氏である伊吹はフェミニストで優しい。

中学の清い付き合いの彼氏を数に数えたら、伊吹は3番目に付き合った彼氏だ。

高校に入って直ぐに付き合った彼氏と夏休み前に別れたあと狙ったかのように告白された。

同じ委員会で会えば少し会話するぐらいの友達だった伊吹。

熱烈に付き合おうと言われて付き合ったのが始まり。


彼はバスケ部のエースで、学校でも三本の指に入るぐらいのイケメンだ。


「今日はうちに寄るか?」

「良いけど。伊吹、バスケは?」

「今日は休み。昨日、メールで伝えただろ?」

呆れ顔の伊吹に、

「そうだっけ?忘れてた」

と笑った。


「暁は相変わらず興味ない事は忘れるよな」
 
そう言った伊吹の声は優しいけれど、彼の瞳は少し寂しそうだった。

「ごめんごめん。今度は覚えとく」

覚えられるかは自信ないけど。


「ああ、出来たら頼むな」

ほら行こうと、鞄を持ってない方の手で私の手を掴んで歩き出す伊吹。


生徒たちで賑わう教室を出て廊下を進めば、無遠慮に向けられる視線。

あぁ、今日も面倒くさい。


女の子たちが目をハートして伊吹を見てる。

そして、ひそひそと囁き合う。


「彼ってバスケ部の・・・」

「伊吹君だよね」

「あんなカッコいい彼氏のお迎えとか良いなぁ」

キャッキャと話す女の子たちは初々しい。

ま、伊吹はバスケ部のエースだもんね。  

そりゃ人気あるかも。







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