虞犯少年

私が彼に堕ちた後 /ほんとうの優しさとは




願ったって叶わないことなんか、いくらでもある。溢れかえってる。それでも願わずにはいられないのはどうして?

新さんのあまりにも淡々とした声は聞いただけで涙の量が増した。

再び俯き、唇を噛み締める私の頭に触れる手はくしゃくしゃと髪の毛を撫で回す。



「でもそれは今日だけだ」


「………っえ?」


「どうやらただの喧嘩ってことになってるみてぇ。保護者のあいつらに連絡がつかなくて、それで俺のとこに電話が来たんだよ。でも俺じゃ嵐を引き取れねーんだと。だから一晩だけあっちで厄介になるって訳」


「じゃ…っ、嵐は…」


「大丈夫」



そこで初めて息詰まっていた空気が少し和らいだ気がした。

嵐が言ってくれた大丈夫と新さんが言ってくれた大丈夫は同じようで全然違う。

嵐は私を不安にさせまいと言ってくれた。先が見えなかった。でも今は新さんのおかげで嵐の身の安全を知れたからホッとする。

だからと言っても拭いきれない感情は一つ、二つ、三つ。後を絶たずわき起こる。

一度も会ったことのない嵐の両親に対して不信感を抱くばかり。



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