虞犯少年

私が彼に堕ちた後 /楽に終れたらいいのにね




目の前に差し伸べられた手を自分から重ねることはできない。

キラキラ光が反射する左手の指輪がまるで私を責めるみたいに、その存在が重くのしかかる。

自ら外したんだ。嵐の彼女である証を捨ててきたんだ。


──…だからもう、その手に触れられない。


なのに、どうして

迎えに来たなんて言うのよ。




「明日香」


「…な、んで…っ」


「一人にして悪かった。もう一人にしないから、帰るぞ」




ダメなの。違うの。私の帰る場所はもうあそこじゃない。嵐の隣じゃない。

伝えなきゃいけない言葉がありすぎて、何も声にならなかった。それを言ったら嵐はどんな顔をするのだろう。


口に手をあてながら漏れる息を必死に止めようとする私の手を嵐が掴む。

鋭い目つきは怒っているのか、それとも呆れたのか分からない。

ただ一つ、分かるのは嵐は私の手を離そうとはしないっていうことだけ。

熱が侵食してギシギシと痛いくらいに掴まれてる手が熱い。

このまま溶けてしまうんじゃないかっていうくらい、そこだけが熱を持つ。

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