虞犯少年

私が彼に堕ちるまで /心臓と酸素の関係性



「明日香が俺をこんな男にしたんじゃねーか」


「っ、私が…」


「俺の女は明日香だ。他の女を抱く気なんてもうねぇ。一生明日香だけだ」



嵐が狂ったのは私のせい…


キュッと唇を噛み締め振り解いた手を掴まれる事はなかった。

伸びてきた手に触れる事なく、その場から早く逃げ出したくて震える足で必死に教室を飛び出す。

嵐は、笑ってた。

それはまるでいくら逃げても逃げられないと言ってるような、余裕があるものに思えて私は全く笑えなかった。


――こんなのを望んだんじゃない。


きっと関係があったのは美帆だけじゃないだろう。私が知らないだけで本当は私を抱いてる時も他の女を抱いてたのかもしれない。

私を触った手で他の女を触ってたのかもしれない。

口でなんていくらでもいいように言えるでしょ?上げたらこんなのキリがない。

"裏切られた"そう言えたならまだよかったのに。

そもそも私は嵐を信じていなかったんだと思う。

そして嵐も…私を信用してなかった。

どんなに近くに居ても気持ちだけは重ならない。

なんで私は泣いているんだろう。

見えない何かに怯え、虚無感に押し潰されそう。

泣きすぎて酸素が足りない。

声を押し殺したって鼻を啜る音が虚しく真っ暗な部屋に広がった。


ただ一つ、漠然と思う。


もう私は嵐のそばに居られない。



どんなに嵐が私を手離そうとしなくても、私は嵐の隣に居て笑える自信なんてないよ。そこまで強くいられないよ。きっと私にしか分からない。

愛される怖さも自分以外の人間に洗脳されていく怖さも、言葉に出来ない気持ちだから誰にも理解なんてされない。


どうすれば嵐から逃げられる?


お願いだから、解放して。こんな虚しくて悲しい気持ちを味わいたくない。

目を綴じれば瞼の裏にこびりついている嵐のあの笑顔が余計、私の身を震えたたせた。

携帯は電源を消してるせいで光がない。着信もメールも受信される事がない、って。だって電源が入ってないんだから大丈夫、って言い聞かすけど嵐と色違いのその存在は思ってた以上に大きい。

結局私は一睡も眠りにつくことなく朝を迎えた。

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