一応夫婦

本当の彼女 /2




葵は今、奇妙な光景を目の当たりにしていた。

自分の荷物を一通り部屋に運び終えリビングに戻ると、婚約者が頭を搔きむしりながら表情をころころと変えている。


「なにしてるの」

葵が声をかけると、稔はぴたりと動きを止める。そしてゆっくりと顔だけをこちらに向けた。

「別に、なにも」稔は目を見開いていう。


「あー……頭、大丈夫?」

「え?」

龍は目を丸くし、ショックを受けたような顔をした。

あっ今のは誤解を与えるいい方だ。

「いや、あの、そうじゃなくて。髪、ぼさぼさだから」

葵がいうと、稔は安堵したような照れたような顔をして乱れた髪を手ぐしで直した。


葵はキッチンに向かう。「なにか飲む?お茶かコーヒーしかないけど」


「えっ悪いよ」

「いいの。ゆっくり休んで。わたしも飲みたいし」

「……じゃあ、コーヒーで」稔は申し訳なさそうにいった。




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