【美獣兄弟と義妹の関係】~母が極妻になりまして~【完】

第6章~ハレの涙に盃を~ /―夜空の下ですること―

愛染さんが追って来たらイヤなので

そのまま女子トイレに駆け込もうと思ったけど


こんなキレイなドレスの裾が

私のせいで汚れたら申し訳ないと思い直し


壁づたいに店の中をコソコソと逃げ惑ってるうちに

‥コケた。


階段につま先が引っかかって、体ごと無様に転倒。

‥ホラ見なよ。高いヒールのせいじゃん!やっぱり!

うずくまったまま、情けない気分で一人、愛染さんを恨んでたら


「何してんだ?」


かけられた声に驚き、顔をあげた瞬間

逃走失敗を悟る。



‥ヤバい見つかった。

慌てて視線をそらしてた。


「どうしたよ?大丈夫?立てるか?」

そんな言葉とともにフワリ‥あたりに漂うのは

雨の夜を思い出させる‥ほのかな、その人の香り。


自分の目の前に差し伸べられた手‥


腰を落として、ちょっと私の顔をのぞき込むような格好で

優しくほほ笑みかけてきたりするから


それだけで


今まで心の中に渦巻いてた、緊張感も劣等感も不安感も

スルスルとたやすく、ときほぐれていく。


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