【美獣兄弟と義妹の関係】~兄の恋人になりまして~【完】

第1章~正義と悪を司る人々~ /―夜と霧雨―

会いたい人がいた。


だから待ってた。一度来たきりのお店の前で。


どうしても、会いたくて。


うろ覚えの道を迷いながら、何とか、ここへたどり着いた。



昼間あんなに晴れ渡ってたくせに

日が暮れたとたん

急に雲行きがあやしくなりはじめ

夜になった今では

冷たい霧雨が、やむことなく降り続いてる。



夜叉兄のクローゼットから

勝手に持ち出してきたコートも濡れちゃった。


どうしよう。怒られるかな?

タグにかかれたブランド名を見て怖くなる。

何これ。弁償できる気が全くしないんですが。



住宅街の一角にある小さなカフェの軒先に座り込み

そんなこと考えながら、途方にくれてる自分がいる。



お店は、その日ちょうどお休みで、ドアにはclosedの看板。

目の前の路地にも、人通りはほとんどない。



もしかして早めに部屋に戻ってきた夜叉兄が

私がいないことに気づいて

心配してるかもしれないけれど

最悪なことに、スマホを部屋に忘れて出てきた。



宝生君に突然呼び出されたせいで、慌ててたから。



いったん戻ることも考えたけど

宝生君と海辺で別れたあと

私の足は、この場所にむかってた。



例えスマホが手元にあったとしても

会いたい相手の連絡先なんて入ってないから結局、同じことだ。



顔を見て、少し話しして、それで自分が安心できれば

すぐにでも夜叉兄のとこに戻るつもり。



そうしなければ、今晩、寝られる気がしなかった。




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