【美獣兄弟と義妹の関係】~兄の恋人になりまして~【完】

第2章~大いなる禁断~ /―業火―

「なに、してるんですか?」


廊下の先に、おじさんの姿があった。


もう猟銃は手にしていないけれど

代わりに脇腹にポリタンクを抱え

中の液体をあたりにバシャバシャと振り撒いている。



ツンと鼻をつく臭いに、嗅いだ覚えがあった。


「それ、ガソリン、ですか?」



「やっと出てきたなぁ」


おじさんが私を見てニタリと笑う。



「どこにいたんだよぉ」


そうしてゴトリ、タンクを床に置くと

ポケットからライターを取り出した。



「全てを燃やしちまえば、この家で何が起こったかなんて

誰もわかんなくなるだろ?証拠隠滅ってやつだ」


「…………」


狂ってるんだ、この人。私は思う。



おかしいよ、完全に。


そうだきっと、修羅兄のお母さんを殺した

遠い昔の、あの日から、ずっと狂い続けてるんだ。



火を付けようとしてる人間と向き合って、その時……

私はなぜか、冷静だった。



血走った目も、荒い息も。額にうかぶ脂汗も。

何だか、狩られる直前の野性動物を見てるみたいで

憐れにさえ、思えてくる。


どうして、そんな感情が湧いたのか。


追い詰められているのは、自分のほうなのに。



「死人に口なしってやつだ。

アンタも、サツのあの野郎も、焼け死んじまえばなぁ」



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