【美獣兄弟と義妹の関係】~兄の恋人になりまして~【完】

第6章~世界が愛であふれるなら~ /―私と兄―

屋敷の離れは

普段、修羅兄が自室として使ってる場所だけれど


その奥に、こんな

落ち着いた雰囲気の座敷部屋があるなんて

知らなかった。



「おりて来いよ。こっち」


夜叉兄のそんな言葉と

差し出された手に導かれるようにして


縁側の先にある

小さな裏庭に足を踏み入れたのも


その時が、初めてだった。



さっき川面で揺らめいていた月が

今は静かに、私たちを頭上から見おろしてる。



母屋を取り囲むように広がる、表の庭と比べれば

ずいぶんと小ぶりな池の中で、数匹の錦鯉が泳いでた。



私はボンヤリとあたりを見回す。



石灯籠の明かりに照らされて

庭石を覆う苔の緑がきれいだった。


春待つ夜の庭園は、静まりかえって

チョロチョロと、どこからか流れる水の音がするだけ。



不思議な気分だった。



日常の喧騒から隔離された

ちょっとした異空間に放り込まれたようで……。



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