【美獣兄弟と義妹の関係】~兄の恋人になりまして~【完】

第6章~世界が愛であふれるなら~ /―脱皮―

あたりから物音が聞こえなくなって

しばらくたってから


おそるおそる

見あげた先には、瞳があった。



厚めの前髪の奥からのぞくのは

凍りつきそうなほど、冷え冷えとした双眸。


自分の周りに転がってうめく男子生徒たちを

冷たく見下ろしながら


手首を勢いよく振り回し

指先に付いた血のしずくを、ピピッと払いのけていた。



「もんじゅ、せんせい……」


思わず、その名を口にする私。



目が合うと

先生が急に表情を緩める。


「大丈夫ですか?

声がしたので駆けつけてみたんですが」


いつもどおりの、控え目な笑みを浮かべたまま

そっと床に両膝をつき


汚れてボロボロの私を、すくいあげるようにして

抱きしめてくれた。



「ケガはどこ?痛みは?ひどい?」


手のひらで背中を撫でながら、やんわり聞かれ

ホッとするのと同時に、涙がドバドバあふれ出す。


「うっ、あ、ありがとうござ……」


お礼を言おうとした瞬間

そばに倒れた男が、うめき声を発してビクッ!


慌てて、先生の腕の中に隠れ込む。


「怖い思いをしましたね。だけど大丈夫です。

ここにいる全員

しばらく一人では起き上がれないような

片づけ方しておきましたから」



「……え」


片づけ方って、そんな

教師が使う言葉とも思えない。



まとった白衣にも、ところどころ鮮血が飛び散ってるし


さっき、無造作に拳の血を振り払ってた時の

ケンカ慣れした仕草。



やっぱり、この先生。

普段どんなに人の好さそうな笑顔してても

何かあるたび、行動の端々に

元ヤンの過去を彷彿とさせるものが、にじみ出ちゃうような……



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