東雲さん家の食卓には【完】

Good-Bye Summer /花火



「脱げ。」


「は?」


「これを着ろ。」


「…………。」








東雲さん家と花火










◇◆◇長女ミコトeye




窓の外は徐々に薄暗く、



♩♫♩♫♪♩♪♫♩♩♫♪♫♪…





ラジオからは夏の定番曲。



「…………。」

「…………。」



聴き入っているわけではなく、ただ、黙り込んでいる二人。



「…俺、言ったよね?」



メグルがポツリ。



「…………。」



俯く私。



「約束破るってことは、何されてもいいってこと?」


「…っ違っ、…。」



訂正したいが、約束を破ってしまった以上、何も言えない。



「…今日はいつもの威勢の良さを感じない。」



赤信号で停止し、私の頭を撫でた。



「…ごめんなさい。」


「謝らないでいい。ただ…俺だけ浴衣ってどうなの?」


「…似合ってます。素敵です。」


「…そういうことは運転してない時に言ってほしいね。」



メグルはそう言うと、額にキスを落とした。



( ごめんなさい。)



心の中でもう一度謝る。



だって…


だってね?


浴衣を着ると思い出してしまうの。



アカネの言葉を、表情を。


キスをした感触を。



一方的な告白、一方的なキスだったけれど、
逃げられなかった、拒めなかった。


本当は逃げなくてはいけなかった。


拒まなくてはいけなかった。


今一緒にいるメグルのために。




…私は共犯者だ。




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