THE BOY in the BOX

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部活が終わり後片付けをしていると、聞き覚えがある足音が後ろから近づいてくるのがわかった。

「自主練?」

直美は、振り向かずにその人物に声をかけた。

「うん、まだ帰らないの?」

その人は、いつもと同じ声音で答えた。
きっと、癖のないまっすぐで柔らかい猫っ毛を汗でビジョビジョに濡らして、手には未開封のスポーツドリンクを持っている。

「もう、帰るよ」

そう言って振り向くと、案の定春人は、手に持ったスポーツドリンクを手渡してきた。

「あのさ、マネージャーの私より、春人のほうが必要なんじゃない?」

入部してからほぼ毎日、この会話を続けている気がする。

「そう?でも、なおちゃんも疲れたでしょ?」

春人は、ニコリと微笑むとほらっと、促してきた。

『そりゃあ、モテるわ』と、直美は思った。と、いうか、毎日毎分思う。春人の優しさは、厭らしさがないのだ。すごく自然に、押し売りではなく、ホッとする優しさを分け隔てなく与えてくれる。

プラスして、180近くある身長と、キレイな白い肌と、並行な二重と、小さな唇に、高い鼻は、横から見ても、正面から見ても見惚れるほど美しい。

でも直美は、春人のことを好きだと思ってはいない。
と、いうよりも、春人のことを好きだったときがある、という表現が正しい。


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