THE BOY in the BOX

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「ゆうり、今日ひま?」


制服のスカートを三段回曲げ、ブラウスのボタンは3個も外し、さらには裾をめくりながら内藤カレンは言葉を発した。


汗で首筋に張り付いた髪の毛はなんとも妖艶で、彼女の大人っぽさを演出している。


「ひま」


わたしがそう言うや否や、内藤カレンは眼の色を変えた。


ー・・、ああ、まずい。これは面倒くさいことになりそうだ。


「ハルトくんの試合の応援、行こ!」


「案の定。」


内藤カレンとは入学直後のクラスで隣同士の席だった。
今でも覚えている。開口一番に、彼女は同じ言葉を口にした。

『今日、ひま?』
『ハルトくんの教室いこ!』


彼女にとっては、教室から試合の応援に格上げされたことがこの2年間の学生生活で1番の功績らしい。

ただ、私には未だそれが理解できない。

学校中の女子たちが噂をするのだ。

今日のハルトくんは…
昨日のハルトくんは…
明日もハルトくんは…

ハルト、ハルト、ハルト。
この2年間、その名前を耳にしたかった日はない。


確かに、小野春人はイケメンだ。
爽やかだし、頭も良くて、しかも誰にでも優しい。

先週の土曜日なんて、歩道橋に登るおじいちゃんの介助をしてた。
思わず二度見してしまった。そんな男が、この21世紀に存在するのか?


否。ありえない。


きっとあの男は、何かを隠し持っているはずなのだ。
そうでなきゃ困る。
イケメンで爽やかで頭良いだけで嫌味なのに。
誰にでも優しい?
少女漫画じゃあるまいし。

絶対に、怪しい。





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