不純愛【完】

帰郷

***

「はぁ…」


知らず知らず出てくるのは重いため息ばかり。

俺は今他県へと向かう新幹線に乗っていた。

今日の昼間、突然鳴り響いた呼び出し音にその名を見れば、実家からの着信。

何かあったのかと出てみれば、80歳になる祖父が階段から落ちて骨折をしたという。


「遥も随分と顔見せてないでしょう。この先おじいちゃんも何があるかわからないんだから、顔見せに行きなさい」


母親の言葉に、そういえばもう何年も会ってない事を思い出した。

いつもなら週末の今日は志乃と会っている頃。

天秤にかけそうになる心を抑えてこうやって向かっているわけだけど…。

老い先の短い祖父のことを思えば、今回ばかりは仕方ないと思うしかなかった。

祖父の家は新幹線の駅から在来線に乗りかえて30分。

徐々に景色が街から明かりの少ない山の麓へ向かうのを見ながら、志乃が恋しくなった。

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