不純愛【完】

偶然 /偶然

ジッと見下ろす瞳を見ていると、ふと。どこか概視感を覚える。

あれ?どこかで会った?もしかして仕事関係?いや、これほどの顔なら忘れるはずもないし…。


「誰?知り合い?」


目の前の見知らぬ男の姿に記憶を探っていると、隣から声が降ってくる。

隣に立つ彼──宮部の方へと顔を上げると、私と男、交互に目をやり、この状況に困惑した様子が伺える。


「…さぁ」


やはり気のせいだったかもしれない。

未だに過去の知り合いとは一致しない男に、じゃあ一体なんで自分の名前を知ってるのか、と疑問が湧いてくる。

こちらは相変わらず不審な眼差しを向けているのに、目の前の男はさも嬉しそうに口角を持ち上げてこう言った。


「瀬尾志乃サン、でしょ?実はこれから昔の友人たちと久しぶりに会うんですよ。ここでちょうど会えてよかった。だから彼女、借りていいですよね?」


『瀬尾志乃』


男が口にするそれは、間違いなく自分の名前だった。

男はさも当然のように、私にではなく隣に立つ彼に言う。


「はっ?私そんなの知らない…」


そんな話は聞いた覚えもないし、そもそも私はこの男を知らない。なのに、



「集まりあんの?だったら言ってくれればいいのに。こっちは気にせず参加してこいよ」


事情も知らない宮部は、どーぞどーぞと言わんばかりに私の身を差し出す。

まるで身売りされた気分だ。

0
  • しおりをはさむ
  • 926
  • 467
/ 437ページ
このページを編集する