どうしても君が好き

第3章 /Ⅴ 誤解




翌日の朝、凜はいつも通りに会社へ向かった。

いつもの席に落ち着き、少しして総司が現れた。
オフィスが独特なざわめきに包まれるため、総司が来たかはすぐ分かる。

「おはよう」
あいさつすると、爽やかな笑顔で「おはよう」と返ってきた。

総司くんは凜の顔を見ながら、目の前の席に座る。

「今日、仕事終わったら何か食べに行かない?おごってあげるよ」

総司が朝から仕事が終わったときの話をするときは限られている。

凜には思い当たる節があった。

「……私、疲れた顔してる?」

「何でそんなこと聞くの?」

言うか言わないか迷った。
総司にじっと見つめられて、結局口を開いた。

「総司くんがそう言うときは、私がいつも疲れてるときだから」

総司は目を見開き、驚いているようだった。

勘違いだったのかな?

「意識はしてなかったけど……」

やはり思い込みだったか……。

「確かに逢坂の元気がないように見えたときは食事に誘ってる、気がする」

「総司くんは結構頻繁に誘ってくれるもんね」

疲れたときだけが特別ではないのだろうか。
単に疲れているとき、元気がないときに、誘われると嬉しいから特別に思えるのかもしれない。

凜が総司の顔を上目づかいに見ると、総司は意味深に口角を上げて笑った。

凜は首を傾げて笑う理由が聞けるのを待つが、一向に口を開く素振りを見せない。
凜の顔をただ見つめて、静止しているだけだ。

こうなったらどうしようもない。

凜はまた総司に問うてみる。
「じゃあ、今、私が元気がないように見えるってこと?」

「それは、自分は元気がない、って言ってるの?」
総司は食い気味に言葉を返した。

「そういうわけじゃないよ」

「ホントに?」

「うん」



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