どうしても君が好き

第6章 /Ⅵ 拠り所



未緒とのことがあったため、互いの家で会うことは避けたかった。

そのため、慎二がバーに誘ってくれたことはありがたかった。

凜は慎二と直接会って話がしたかったし、どちらの家でもない。

慎二の顔を見ると、見られるだけ見ようと思うし、話せば、聴けるだけ聴こうと思う。
面と向かえば、やはり好きなのだと実感して、不信感がどこかに行ってしまう。

元カノとまだ会ってるの?

私たちって付き合ってるの?

質問したいことは沢山あった。

しかし、慎二の話を聞いているのが楽しくて、この楽しい時間を辛いものには変えたくなかった。

真実や自分との関係を問いただすことは、怖くてできなかった。

付き合ってるに決まってる、と笑い飛ばしてほしいという気持ちも大きかったが、未緒を思うと、逆に付き合っていない方が自分のためのような気がした。

保守的な自分に嫌気がさす。


凜は慎二と対面して、ただただ他愛のない話を繰り広げ続けた。

結局、楽しく会話しただけで、帰路についた。

バーからは慎二のマンションの方が近く、慎二は「寄ってく?」と言ったが、凜は渋い返事しかできない。

「嬉しいけど、帰るよ」

慎二は「何もしないって」と声を上げて笑う。

確実に酔っていた。

慎二は凜の手を取って、ずんずんと進む。

「ちょっと…!」

凜は抵抗したが、慎二は放すつもりはないらしい。

凜は慎二に気付かれないようにしてため息を吐いた。

本気で抵抗できない自分が嫌になった。

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