晴れの日にコンコンと――

帰宅

 

 電車に揺られどうにもスッキリしない気持ちで絵里は自宅マンションに帰宅した。



「ただいま~」



 部屋の電気を点け、ソファーの上に紙袋を置くとガサガサと狐のぬいぐるみが顔を覗かせる。


 袋の中から周りを見回し、ほっと息をついて出てきた。



「お邪魔します」


「なにか飲みますか?」


「おかまいなく……」


 まだお互いに混乱している部分が大きく、会話も間々ならない。

 
 深く考えずに北木を家に連れ帰った絵里だが、その判断が良かったのかも不安になってくる。



――取り敢えず、着替えてご飯作るか。



 狐のぬいぐるみが客というなんとも変な状況。帰り道でほんの少しだけ取り戻した余裕が、何とかなるだろうと楽観的な考えを呼び覚ましていた。



「着替えたらご飯作りますけど、なにかリクエストありますか?」


「いや……この体では食べられそうにない」


「あぁ。でもここで餓死とかやめて下さいね」


「物騒なこと言わないでくれ!」



 狐のぬいぐるみが北木だと分かっていても絵里はついつい、からかってしまう。中身はともかく短い手をばたつかせ、ふさっりした尻尾をピンッと立てて怒る姿が可愛いのだ。



――やばい、ちょっと癒される感じがする。



 癒されている場合ではないのだと、絵里は自分に言い聞かせ首を振る。


 着替えついでに風呂に入って来ると北木に告げてその場を去って行く。


 

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