逆様少女Ⅳ【完結】

第十八章 /逆様少女、終幕






反射的に受け止めたセリだったがナリに腕を掴まれて静かに息を呑んだ。




「…家出てって……ッ、何してんのかと思えば人殺しかよ、あ…にき――――」




セリが……“兄貴”――――?



痛みに耐える為か、彼を離すまいとしているからかナリがきつくセリの腕を掴んで離さない。


意識も朦朧としている筈なのに。


その手は強く何かを引き止めている。




「全く…次から次へと邪魔が入りますね」




それでもセリは一瞬集中を削いだもののその目に宿る敵意や殺意はなくなっていなかった。




「俺はチビの不安要素は一つでも消したい。それだけなんですけどね」




ナリを支え直すとそんな表情を私に向けた。





「難しいですね。大切にするって」





冷静にそう言葉を紡いだ彼の声はまるで啼いているようだった。



だから、だから誰も言葉が出なかった。



この状況に混乱しているのもあったと思う。


けれど、根本的なものはセリの切実な言葉が皆の胸に刺さったからである。



そんな中アスマが女に支えられながらそっと立ち上がる。


私の隣で立っていたタツミが真っ先に警戒したが、懸念に過ぎなかった。





0
  • しおりをはさむ
  • 1612
  • 4089
/ 368ページ
このページを編集する