意地悪な兄と恋愛ゲーム【完】

第十一章 /天の川

それから2日後の9時半ピッタリ

美咲が、晴斗の部屋のドアを開くと、部屋の中は真っ暗だった

テラスに続く窓が開き、カーテンが夜風にサラサラと揺れている 

美咲はそっと室内に入り、テラスを覗いた

晴斗は手すりに手をかけて空を見上げていた

晴斗の隣には、天体望遠鏡が準備されている
 

「晴斗…」


晴斗の背中に声をかけると、晴斗は振り返り「待ってたよ」と言った


美咲は晴斗の隣に並ぶと、一応確認する


「あの、今って、ゲームは……」


「今夜は休戦って事だよね?」


晴斗は分かっていたように頷いて返した


「本当に、何もしない?」


「心外だな。そんなに信用ない?」


美咲が思わず黙ると、晴斗はいつも通りの笑顔でこう言った



「今夜は一緒に、星を観よう?」



この笑顔には、逆らえない____



美咲は、密かに高鳴る鼓動を抑え込むように、胸にギュッと手を当て、深まった夜空を見上げた


静かで澄み渡った夜空にはもう、沢山の星が瞬いている


「……秋の空って、こんなに星が出てるんだ」


美咲が息をつくように言うと、晴斗も再度、空に視線を移す


「秋の夜長って言うでしょ?秋の夜空は一番、天体観測に向いてるんだよ」


「そうなの?」


「他の季節は、空が霞んだりガスがかかりやすかったり、花粉やホコリが多かったりで、ここまで空気が綺麗な日は少ないんだよ」


「雨とか曇りとか、天候にも左右されちゃうよね…」


「それに、満月の夜も避けたいな」


「どうして?」


「月明かりが強すぎるんだよ」と、晴斗は教えてくれた

  
「……それじゃあ、今日の月は欠けてるから綺麗に観られるの?」


「うん。今夜は星を観るなら最高の条件が揃ってる。美咲と約束したからには、絶好の日に見せてあげたくて、ずっと空の動きを読んでたからね」


「約束なんて、もうすっかり忘れられてると思ってた」


「俺が、美咲との約束を忘れる訳がないでしょ?」


晴斗は約束を覚えていてくれた
  
何日もかけて準備を進めてくれていて、今夜、私の望みを叶えてくれようとしている……
 

その事が、素直に嬉しい____




「さっそく観てみる?」


美咲が頷くと、晴斗は天体望遠鏡が差している空の方角へと指を向けた


「あそこに、小さな星が無数に集まっているのが見える?」


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