涙の先で君に会いたい

気が滅入る程の長い手続きを終えてやっと外界へ出れば直ぐ、私は美しさと異質さを綯い交ぜにした万華鏡を覗き込むこととなった。

不愛想な壁を抜けた先のその景色に素直に驚き、あまりの現実感のなさに目を瞬く姿はきっと間抜けだろう。

中途半端に開いた唇を撫でる風の硬ささえ、日本とはまるで違って思えた。



新鮮なそれは興味と同時に私の足を竦ませる。

呆然としたまま暫くその場から動けなかったが、呼吸や、言葉や、恐れや、好奇心や、兎に角様々なものを飲み込み、頷いた。

きっとここには自身が望むものがあるはずだから。ゆっくり瞬くと共に一歩を踏み出す。



穿き古したヴィンテージジーンズは兄からのお下がり。

それを無理矢理にベルトで腰へと締め上げ、真央さんから借りた大きすぎるバックパックを背負う私の手には、読み込まれた旅行雑誌がある。



悪戯をする風がツバ広の麦わら帽を攫おうとするので慌ててそれを押さえた。

と、同時に―――視線は空へととらわれる。

日本にはない青、蒼、アオ。

夢のようだ。

鈍い痛みを呼気に溶け込ませるように深く息を吐きだし、私は空を見上げながらゆっくりと異国の街へと身を投じた。

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