真夜中の相談屋敷

【相談1】マザコン少年の憂鬱 /その 1

黒板の中央に自分の名前を縦に書く作業が地味に面倒くさい。

教室の後ろの席まで見えるように大きく書くこと、バランスと丁寧な字を意識して。

教室に入る前に、このクラスの担任から言われた。

…バランスと、丁寧な字を…、って、

先生の方が黒板に字を書く歴が長いんだから、事前に書いておいてくれればよかったのに。

てゆーか、書いておいてほしかった。

蝉の鳴き声が教室に響く中、カッカッと小さく聞こえるチョークの音。

…暑い…。

分かってはいるが7月はやっぱり暑い。

首から汗が垂れてきた。

少しだけ内巻きのかかったセミロングの髪が、中途半端に肩について暑くてうっとうしい。

…よし、書けた。

先生に言われた通り書けたと思う。

これでいいだろうと、自分が書いた字に納得をした私は、チョークを粉受に置いて黒板に背を向けた。


「お、小野寺 舞……です。よ、よろしく」


私はこれから一緒に勉強していくことになるクラスメイト達に挨拶をした。

笑って挨拶をしようと試みたが、緊張のせいでどうも無理だった。

無理に笑っていれば、きっとかなり引きつった笑みになっていたことだろう。

…無愛想になっちゃった…。

このクラスの生徒の人数は、だいたい30人くらいだろうか。

私の第一声の挨拶を聞いた30人が、転校生の小野寺 舞は無愛想。と、そんなイメージをつけてしまっていたらどうしよう。


それは、“30人のクラスメイト以外のモノ達”にも。


「今日から2年A組の一員になる小野寺 舞さんです。みんな、仲良くね」

先生がみんなに私のことを紹介したが、これが高校の転校生の紹介の仕方なのだろうか。

小学校みたい。

「じゃあ小野寺さん。席はあそこね。あの空いている席よ」

先生が指差した席は、一番後ろの窓際の席だ。

「もう座っちゃってる…」

「え?」

「あっ、いえっ、なんでもないです」

私は苦笑いをしてその場をごまかし、そそくさとその席に向かった。

0
  • しおりをはさむ
  • 9
  • 20
/ 460ページ
このページを編集する