真夜中の相談屋敷

【余談】少女、夢の中で /その 2

…正直言って、あまり古文には興味がなかったんだよね…。


私はふっと笑って、蔵で古文の本を広げている少女と、古文を少女に教えているおばあちゃんの様子を見ていた。

少女は床に本を広げ座り込んでおり、おばあちゃんは少女の目の前でしゃがみ込んでいる。


…おばあちゃんと一緒なら、ひとりにならなかった。


今思えば、古文のことを教えてって言ったのは、おばあちゃんと一緒に居るための、単なるこじつけだったのかもしれない。

ひとりにならないための、こじつけだったのかもしれない。


私がそんなことを考えていると、少女は本を不思議そうに見つめて首を傾げていた。

「おばあちゃん。この本ね、おかしな字があるの」

『それは漢字。今の舞にとって難しいものよ』

「かんじ…。覚えないと読めないの?この本」

『そうね…、読めないところもあるわね』

「なら、わたし覚える!」

『そうかい。でも、まずはひらがなから。舞はまだ小学校へは行ってないんだから』

おばあちゃんは立ち上がると、本棚の中にある1冊の本を指差した。

『この本、取ってくれるかい』

「分かった!」

少女はおばあちゃんが指差している本を取り出した。

おばあちゃんは幽霊だから物に触れることはできないということを知った少女は、こういう場合にはいつも自分が本を取っている。

『その本には『いろは歌』が書いてあるのよ』

「いろは歌?」

『それを読めばひらがなが覚えられるよ』

「歌なのにひらがなが覚えられるんだ!不思議ね!」

『そうね…、不思議ね』

おばあちゃんはクスリと笑った。


おばあちゃんの昔話や、お父さんの幼かった時の話など、古文の勉強以外でも少女はおばあちゃんとたくさん話をした。

ある日、少女は嬉しそうに蔵の中に居るおばあちゃんの下へ向かった。


…?


「おばあちゃん!わたしね、今日ね!お友達ができたのよ!」

『お友達?』


…友達…。


「公園に行ったら一緒に遊んでくれたのよ!」

『おや、公園かい。けれど…ここから公園までとても遠いはず…。よく見つけたわね』

「冒険して見つけたの!」

『おやおや。それで、お友達の名前はなんていうんだい?』


「クラゲみたいな季節の子!」


『なんだい?それ…』

「クラゲで季節だったもん。だからわたし、そう覚えちゃった」

おばあちゃんはそう言う少女を見て、クスクスと笑っていた。


…とも…だち…?



それから少女はひらがなを覚えた。

少女が小学校に上がると、今度は漢字も教えてもらっていた。

そして、今までよりも難しい古文のことを勉強していった。



また、ザザッと私の目の前が揺れる。


少女は高校2年生の春を迎えていた。


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