真夜中の相談屋敷

【余談】少女、夢の中で /おまけ -あきside-

僕は廊下を走っていた。

窓から夕日が射し込んでいる。

こんな日は、ゆっくりと部活へ向かいたい。

『お兄ちゃん待ってよー!』

「や、やだよ…!」

後ろからユウが追いかけて来る。

ユウは宙を飛んでいるから、走って逃げる僕にはとても不利な状況だ。

なぜ追いかけられているかというと、ユウが僕の身体に入りたいというからだ。

…ま、またマザコンになるのはやだ…っ!

僕は必死に逃げていた。

昨日も追いかけられていたのに、今日も追いかけられるなんて…。

不運が続く。

「あっ!」

あの長いポニーテール。

瀧さんの後ろ姿が見えた。


もう勉強が終わったのだろう。

鞄を持って部活へ行こうとしている。

「た、瀧さん!」

瀧さんに助けてもらおうとして名前を呼ぶと、瀧さんは僕の方を振り返った。

「あ、あっきー」

僕は息を切らして瀧さんの背後に隠れた。

「どうしたの?ユウユウと追いかけっこ?」

瀧さんはのん気に笑っている。

『お姉ちゃん聞いてよ!お兄ちゃん身体に入らせてくれるって約束したのに入らせてくれないんだ!酷いよ!』

ユウは怒り口調で言っている。

「あっきー、本当に?」

「ち、違いますよ!僕そんな約束…。…あ…」



“いつでもいいから取り憑かれて?”



今朝の葉月の言葉を思い出した。

…もしかして、あれのこと!?


うわー、うわー、嘘だろ…。

流れるように引き受けちゃったよ……。


僕が頭を抱えると同時にユウは泣き出した。

『ママに…、ヒック…、絵…、描きたい……、グス…』

…な、泣かれても困るよ!

瀧さんは後ろに居る僕に目を向ける。

「あっきー、入らせてあげれば?」

瀧さんはたまに霊能者としてどうかと思う発言をする。

「うぅ…」

『グス……グス…』

取り憑かれないと泣き止んでくれなさそうだ。

……。

僕はため息をついて瀧さんの後ろから出た。

そして両腕を広げる。

「…いいよ」

『ホントに!?』

ユウは僕の返事を聞くなり一瞬で笑顔になった。

子どもはコロコロと表情が変わる。

『わーい!』

「あー!待った待った!」

『…ふぇ?』

「小野寺さんに抱きつくのはダメだからね!」

『……』

ユウはそのことに関しては返事をしないで、僕の胸に飛び込むように僕の身体に入り込んだ。

「どうしよっかな〜!」

…えぇ!?ちょっ、ユウ!

「ウソウソ!ありがとう、お兄ちゃん!」

…うぅ…。


その後、僕に取り憑いたユウは瀧さんに紙とクレパスを借り、近くの空き教室に入った。

なんで瀧さんクレパス持ってるんだろう。

こうなることを分かっていたかのような素早い対応だった。



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