センチメンタルブルー

作者園子

中学3年生、夏。

…青臭い、年頃。

side 島﨑亜子



「うわあ、だるい」


「やだなー、今日からか」


校門に立っている生活委員がそんな声を漏らしていた。


下駄箱で靴を履き替えていると、


「はよっ」


バン!


思いっきり背中が叩かれる音がした。


「痛った」


びっくりして振り返ると、そこには、私より少し背が低くて耳と同じくらいの高さに結んであるポニーテール。


「あ、すず」


「え〜そんなに痛かった〜?」


わざとらしく聞いてくるのがまた寿々歌らしい。


「黙れ怪力ゴリラ」


「誰がゴリラよっ、テニス部ですー」


「…てか今日早くない?」


すずはいつも朝のチャイムギリギリに来る。


現在7時50分で、チャイムが鳴るのは8時30分。


するとすずは得意気に、鼻息を荒らしてスマホを取り出した。


「今日の日の丸くんの占い!おうし座10位でさー、遅刻厳禁って言われたから慌てて出てきたんだよね」


だからね、理解。


すずは4チャンの朝の天気予報に出てくる日の丸くん(着ぐるみ)の大ファン。


しかもスマホにアプリがあるぐらいその占いは当たるらしい。


すずは4月27日生まれか。私は11月23日だから…いて座?


「いて座は何位?」


「いて座ねー…あ、あった!お、1位!マイペースに行きましょう、だって」


「マイペースねえ…今日人になんか乱されんのかな」


「振り回されるとか?」


「ないといいけど…あ、私4組だから、ここで」


南校舎2階廊下の途中で立ち止まった。


「私、亜子と同じクラスが良かったー」


「それは私も同じだから。ほら、さっさと自分のクラス行きな」


「ちぇー、亜子も友達と仲良くね!」


「どーも」


そしてすずはやっと8組に行った。


4組はまだドアが閉まっていて。


また私が1番か。今日朝練ないのにねー。


右手でドアを開けようとした。


…けど開かなくて。


「あ」


鍵忘れた…。


あーもう何やってんだろ私。


とぼとぼ鍵のある職員室に向かいながらため息をついた。


新しいクラスになって2ヶ月。


中3にもなるのに、クラスに仲いい子、ほんっと少なくて。


話せる子はいるんだけど、移動は1人だったり。


6月は憂鬱だ〜…。


生徒会長がこんなんでいいんですか!って担任にも言われちゃったしー。


えっと、鍵…3-4、3-4…と探していた時。


横から3-4の鍵をとる手が。


え、何事。と思い、振り返った。


「…浅香」


「なんだ島﨑。その嫌そうな顔」


「あんた1組でしょ、なんで4組のとってんの」


浅香虎太郎。なんつー昭和臭い名前ってのは置いといて。


こいつとは幼稚園が一緒で久しぶり、みたいな。


2年のクラスが一緒で声かけられてそこで初めて知ったんだけどね。


「んー?お前がいたから?」


「は、なにそれ」


思わず笑う。


「ほら、4組の」


「ありがと」


…うーん、4組にもこうやって話せる人がいたらいいのに。


あー、早く部活やりたいなー。


そんなことを思いながら左手首に巻かれた包帯を見つめた。


1人の教室で、そんなことを思った。


今日からかテスト期間か。