好 き の 内 側 を 見 せ て 。

07







人の顔と名前を覚えるのが得意なのは、自分が営業という仕事に就いているからだろうか。しかし、この特技をプライベートで有難いと思ったのは初めてである。




入社1年目を無事に終えようとしていた3月。




1人で営業した帰り、昼ごはんを抜いていたこともあって寄った喫茶店。今はやりのカフェというより昔からあるような喫茶店で、長く続くカウンターが印象的な店だった。




「 いらっしゃいませ 」



紳士な店主の低めで小さな声が響く。と、その向こうで聞こえるこの店に似つかわしくないような高らかで楽しそうな声。けしてうるさすぎず、元気の出るような笑い声だった。デートでもしてるのか、笑顔が尽きない様子で少し羨ましく思う。



メニューを開くと綺麗とは言い兼ねるが、丸文字の中にも大人っぽさを感じる読みやすい手書きの文字でメニューひとつひとつが丁寧に書き記されていた。どうやら印刷ではなく、ひとつひとつ手で書かれているようだ。



その中のひとつであるオープンサンドとサラダのセットを頼む。



しばらくして手元に影が出来たと思うと、さっき客だと思っていた明るい笑顔の持ち主がトレーを持って立っていた。






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