木蓮ひらり

「どういうこと?」


あたしの声が少し掠れた。

木蓮と杉本くんが黙ってあたしたちを見ている。


「遠距離になって、ふられたんだ。離れるとだめなひとっているんだよね」


ヒデちゃんはそう言って、柱に掛かった時計を見上げた。


「そろそろ行くよ。見送りありがとな」


ヒデちゃんは改札へ向かった。


杉本くんがヒデちゃんに何か話しかけて、木蓮も短い挨拶をしたみたいだったけれど、なんだか遠くて聞き取れない。

ヒデちゃんは杉本くんと木蓮に何か応えて、最後に「トモもな」と言った。

何が「トモもな」なのかわからないけれど、あたしは黙って頷いた。

たぶん「元気でな」とでも言ったのだと思う。



ヒデちゃんは改札の向こう側に消えた。



どこからか駅の構内に入ってきた油蝉の音が、耳障りだ。



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