木蓮ひらり

乱反射 /7

聡子さんはムーランルージュの横の路地側にある小さな玄関のドアを開けた。


ひんやりしたコンクリートの階段を上ったところが靴脱ぎになっている。


とても静かだ。


「やっぱりいないわ」


聡子さんはそう言いながら一番先に部屋に入り、木蓮とあたしも後に続いた。


リビングのテーブルの上にはビールの空瓶が五、六本とウイスキーが一瓶。
食べかけのチーズやクラッカー。


「あ、足元、気をつけて!」


声をかけられて床を見ると、割れたガラスが散乱している。


壁にグラスを投げつけたのだろう。


「ごめんね、こんな風で」


聡子さんはどこからか箒とちりとりを出してきた。


木蓮が大きめのガラスの欠片を拾ってちりとりに入れると、聡子さんは「あんたはいいから」と言った。


「トモちゃんと部屋に行きなさい。宿題あるんでしょう」


聡子さんに促されて、あたしたちは木蓮の部屋へと向かった。


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