木蓮ひらり

陽炎 /1

陽炎の立つグラウンドに、野球部員が水を撒いている。

水は撒いたそばから干上がっていて、その労働がなんだか哀れだ。



木蓮は今日が二学期の部活始めで、帰りは遅くなるかもしれないと言った。

雑草を抜いたり、ひまわりの種を採ったり、秋植えの植物のための土作りをしたりと、九月の園芸部はなかなか忙しいらしい。

ジャージ姿で花壇へ向かう木蓮に手を振り、あたしはひとり校門へと歩いた。



門を出た瞬間、S高の制服を着た男子の姿が視界の端に入り、思わず足を止めた。

杉本くんだった。

二人同時に「あ」と声を上げて、あたしの方から話しかけた。


「木蓮なら部活だよ」

「うん、知ってる。こっちは顧問の出張で部活が休みになったりして、約束の時間より早く着いちゃったんだ」

「約束してたんだ?」

「うん」



このひとたちは本当に「今までどおり」の付き合いをするんだな。

そう思って、あたしは杉本くんに同情した。


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