木蓮ひらり

ひぐらし

「ブルームーン」の裏側にある公園の風景は、もう秋めいていた。

初夏に見たアーチの白い花はもう無くて、うっそうと茂る葉の色はくすんでいる。

華やかに咲き誇っていた蔓薔薇も今は茎と葉ばかりになり、
名前も知らない紫色の草花が小道の脇にわずかな彩りを添えている。

夏の花は盛りを過ぎているのに日差しは強くて、あたしとヒデちゃんは花のない藤棚の影へ入った。


「夏休み、何してたの?」


責める口調に聞こえないように、あたしは注意深く尋ねた。

「お盆の三日間は家族で信州旅行……後は何も。ほとんど家に籠もってたよ」

「勉強?」

「まあね……これ、おみやげ」


ヒデちゃんはそう言って半袖パーカーのポケットから小さな箱を取り出した。


「信州って、石がいっぱい採れるんだって」

「……石?」


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