木蓮ひらり

湯気の向こう /1

「そりゃ驚いたよ。いきなり警察が踏み込んで来て『はい動かないでー、店から出ないでー』ってさ」


カウンター席の常連さんがママに向かってそのときのことを話している。

平日の早い時間で、お客はまだそのひとだけだ。


「ネオンは十二時には消してあったらしいけどね。誰かがチクったんだろうなあ」


警察に事情を訊かれたらしいけれど、お客さんたちは飲んでいただけだったからすぐに解放されたそうだ。

木蓮のお父さんは留置場に入れられて、もう三日目になる。

木蓮はまだ学校を休んでいる。

『大丈夫?』とメールしたら

『ありがとう 大丈夫よ でももう少しだけ休む』と返ってきた。



「風営法違反って、なに?」


そのお客さんが帰ってからママに訊いた。


「いろいろあるんだろうけど、今回のは時間外営業みたいよ……風俗営業法では夜十二時以降は営業しちゃいけないんだって」


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