木蓮ひらり

湯気の向こう /2


「……ちょっと焦っちゃったのね……

……あのひとを止められなくて……

結局言いなり……」


「……マスターは、どんな様子?……」


「……まあ……風邪っぽいって言ってたけど……」


「……お店は当分……」


「……わからないわね……」




久しぶりに暖かい、日曜日の午後だった。

あたしは宿題を途中で投げ出して眠っていて、微かに聞こえる話し声で目覚めた。

聡子さんと一緒に木蓮も来ているかもしれない。

そう思って、タイミングを見計らってダイニングへ入った。


「……こんにちは」


こんなときにどんな挨拶をしたらいいのかわからなくて、いつもどおりにぺこりと頭を下げた。

聡子さんも笑顔で「こんにちは」と返してくれた。

木蓮はいない。

なんとなく冷蔵庫を開けて飲み物を出して、それから

「木蓮は元気ですか?」

と尋ねてみた。


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