木蓮ひらり

凩 /1

週明けの朝は吐く息まで凍りそうな寒さだった。

歩道の脇に植えてある柘植か何かの常緑樹が霜に覆われていた。

だけどこの歓楽街の地下には温泉の管が通っているから、路面は凍らない。

側溝には旅館の浴場からの排水が流れていて、蓋の隙間からは微かに湯気が上がっている。

あたしは温かそうな箇所を選びながら歩いた。


歓楽街を抜けて国道へ出る頃に側溝の湯気は消える。

陸橋を渡りバスターミナルの裏にさしかかったとき、うちの学校の制服を着た子たちが降車場から出てきた。

隣町からのバスが着いたのだろう。

背中を丸めて歩く生徒たちの中のひとりが、あたしの顔を見て近づいてきた。

同じクラスの男子だった。


「あのさぁ」


男子は怪訝そうな顔をしている。


「なに」

「待合いのベンチで寝てるやついるんだけど」

「……うん?」

「……あれ、瀬田じゃねえかな」


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