木蓮ひらり

木蓮のコートの下は部屋着みたいな柔らかい素材のパンツだ。


「制服は?それと、かばん」


木蓮は首を横に振る。


「……いつからここにいるのよ」

「……家を出たのは……朝……四時過ぎらっけ……あ、寒くて口が回ららい……」


あたしは手袋を外して木蓮の手を取った。


「わ!冷た!」


自分の両手で木蓮の手を包んで温める。


通り過ぎるひとたちがあたしたちを見ていくけれど、かまわない。


「うちに行くよ」

「トモ、学校は」

「いいから。木蓮、帰れないんでしょう?」


木蓮は僅かに目を伏せた。

木蓮に手袋を貸して、立つように促す。

今来た道を、ふたりで歩く。

ひとの流れに逆らって、閑散とした朝の歓楽街へと戻ってゆく。



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