木蓮ひらり

波瀾 /3


あたしには木蓮の気持ちが少しわかる気がした。

あるひとが普通だ平凡だということが、別のひとには、触れることのできない夢みたいに思える、そういうことってあると思う。

杉本くんは木蓮の家族のことをほとんど知らないのだろう。

そのせいで杉本くんは、木蓮の悲しみを全部自分のせいだと思っている。

杉本くんに何もかもを話してしまいたい。

もしも話したら、あたしは木蓮を裏切ることになるのかな。

固く巻かれた繭を無理矢理こじ開けて、柔らかな心を壊してしまうことになるんだろうか。


木蓮、早く来て。

あたしが余計なことを話す前に。


木蓮が杉本くんの顔を見て、ちょっと驚いて、それから「久しぶり」って言ってにこにこしたら、ふたりは元に戻れるかも知れない。

そう願いながらも心のどこかで、木蓮がそんな風に上手く立ち回れるはずがないと思った。

たぶん木蓮はもう、杉本くんに対しては、心の痛みを隠しきれない。



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