木蓮ひらり

波瀾 /5

木蓮の手を引いて二階へ上がった。

靴を脱いで住居に入り、テーブルの上に並んだ七、八本のビールの空瓶を横目に見ながらリビングを通り抜ける。


「木蓮、着替え出せる?あたしはお風呂入れるから……栓をしてスイッチ入れればいいんだよね?」

「あ、自分でやるから……」

「いいから」


あたしは木蓮の背中をそっと押した。


「……ありがとう」


木蓮は自室へ入り、あたしは浴室に行った。

バスタブをざっと洗い、湯張りのスイッチを押す。

廊下に出ると、木蓮の部屋のドアは開け放してあった。

手持ち無沙汰になったあたしは戸口に立った。

木蓮はチェストの前で着替えを手にしたまま、放心したようにしゃがみ込んでいる。

油にまみれた肌と髪は、いつもの清楚な輝きとは違う、ぎらついた光を放っている。


「……ごめんね。せっかくの、クリスマスイブ」


木蓮が言った。

少し朦朧としているようだった。



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