木蓮ひらり

波瀾 /6

「電話しても誰も出ないし、店はあの有り様だし……何があったの?」


聡子さんが尋ねたけれど、木蓮は聡子さんを見つめたまま黙っている。

話したくないのか、想いが強すぎて言葉にならないのか、わからなかった。


「どうしたの?」


聡子さんに重ねて訊かれて、木蓮は胸につかえたものを押し出すように言った。


「お父さんが、どこかへ行っちゃった……お酒を飲んでるの……」

「出て行ったのはいつ?」

「さっき」

「最初から順に話して」

「……最初って……」


木蓮は口ごもってうつむいた。

聡子さんは「しっかりして」と言った。


「あの……今、うちのママが、おじさんのこと探しに行ってます」


あたしが木蓮の後ろからおずおずと口を出すと、聡子さんは初めてあたしに気がついたようにこちらをみた。


「そう……ありがとう」


聡子さんはそう言って、自分の体を抱くように腕を組んだ。


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