木蓮ひらり

下萌 /2

夢を見ていた。

現実の木蓮の声があたしの眠りの中に響いていたのかもしれない。

木蓮がお父さんに引っ張られて壁に頭をぶつけて、杉本くんがかばう。

あの時と同じだ。

違っていたのは、木蓮のお父さんが灯油を撒いたムーランルージュに火をつけてしまったことだ。

あっという間にお店は火の海になって、木蓮も杉本くんもおじさんも姿が見えなくなって、あたしは近づくことができない。

水浴びをする女たちの油彩画が、葡萄色のベルベットのカーテンが、焼けただれてゆく。

外に出たら近くに川が流れていて、あたしは水を汲んで炎にかけている。

いつの間にかヒデちゃんもきて、水をかける。

ママもやって来て一緒にかける。

ママは必死に聡子さんの名前を呼んでいる。

あの中には聡子さんもいるのだ。

0
  • しおりをはさむ
  • 215
  • 3
/ 365ページ
このページを編集する