木蓮ひらり

あまくてにがい /1

ここ数日寒さは厳しさを増したけれど、あたしは気持ちの上で何かの山を越えたようで、なんだか気が抜けている。

木蓮は一見、特に変わりのない生活をしている。

あれから大きく体調を崩すこともない。

もともとがテンション低めで安定している印象で、はたから見たら元気なのかそうでないのかわからない子だと思う。

見ているだけだと見誤ることは学習したから、木蓮に調子を尋ねてみると、それでもやっぱり眠れる日とそうでない日があると言う。

安定しているように見えても、心の奥底でもがいている。

だけど、不謹慎かもしれないけれど、木蓮が前みたいに何でも「平気」とは言わずにかなり正直に話してくれるようになったことが嬉しかった。

あたしには木蓮の瞳が、波のように揺れながらも少しずつ光を取り戻しているように見えていた。

ここではない何処かを見ているような表情を見せることは少なくなって、目の前のあたしたちを捉えてくれているのがわかる。


「あたしが実家に行ってた間、何かあったの?」


ママがそう訊いてきた。

何故そう思うのかと訊き返したら、それまで張り詰めていた空気が緩んだみたいだって言う。

ママは友だちの結婚披露宴で高まった気持ちを持ち帰って、あたしと木蓮の気持ちも盛り上げようと勢い込んでいたらしい。


「二人ともなんだかほっこりしてるから、拍子抜けしちゃった」


ママが言うんだから、きっとあたしの気のせいじゃない。

少しだけ、何かが変わった。


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