木蓮ひらり

あまくてにがい /2

次の日の土曜、あたしはブラウニーを作った。

初めて作るお菓子だけれど、レシピは手元にあるし、なんとかなるだろうとエプロンをかけ腕まくりをしてはりきった。

冷めるのを待って食べてみたブラウニーは不味くはないという程度の出来で、食感が今ひとつだ。


「こんなもんなのかなぁ……」


そう呟いてため息をついたところに、木蓮が顔を覗かせた。


「木蓮、起きたんだ。気分はどう?」

「もう平気。いい匂いね」


今朝の木蓮は朝食があまり食べられず顔色も良くなかったので、あたしがホットミルクを飲ませて二度寝を勧めたのだった。

だんだん元気になっているとはいえ三歩進んで二歩下がるといった風で、夢見のわるい日が続くと貧血みたいな青い顔になってしまうようだ。

でも今の木蓮は朝よりすっきりした表情をしている。


「匂いはいいんだけどねー」

「おいしくないの?」


あたしはブラウニーをひと切れ、木蓮に差し出して齧らせた。


「おいしいけど……固いのかな?」

「ところどころ固いっていうかー」


二人して首をひねる。

木蓮はテーブルの上に広げたお菓子作りの本を手に取り、椅子にかけて熱心に読み始めた。

その間にあたしは紅茶を二人分淹れて、隣に座る。


「……バターのかたまりがなくなるまでかき混ぜます……」

「うん、やった」

「蜂蜜はかたまりが出来やすいので気をつけます」

「気をつけた、と思う」


玉子は一個ずつ入れては混ぜるようにしたか、泡を潰さないように気をつけたか、粉はじゅうぶんにふるったのか、木蓮はひとつひとつ訊いてきて、あたしは「ちゃんとやったよ」と答えて肩をすくめた。


「これが初心者の手作りケーキの味ってもんなのかなあ。ヒデちゃんにもっとおいしいの食べさせたかったー」


あたしが天井を仰ぎ見て嘆くと、木蓮は「もう材料ないの?」と尋ねる。


「あるけど」

「じゃあ、もうひとつ作ってみよう。私も手伝う」


また作るにしても同じレシピなのに、もっとおいしくなることなんてあるのかな。

そう思ったけれど、木蓮のせっかくの申し出なので再チャレンジすることにした。


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