木蓮ひらり

鳥雲 /1

学校の子たちの関心は良くも悪くも長続きせず、いつのまにか木蓮の家の騒動が話題に上ることもなくなっていた。

そうなるとまるで何かが解決したような錯覚を起こしそうになってしまうけれど、木蓮の細くなった体はまだ戻りきってはいないし、体調は安定しない。

外でしか会わないひとたちは「元気になってきたみたいね」と言うし、確かにそうなんだけれど、一緒に暮らしているあたしとママはまだ木蓮の声の調子や食べ方や目の光を見てその日の調子を見極める。


「心配しすぎないで。良くないときはちゃんと言うから。そう決めたの」


木蓮のその言葉は信じられる。

だけど、アルバイトをしたいと言い出したときには思わず「大丈夫なの?」と訊いてしまった。


「学校が休みの日の昼間だけでいいんだって」


そのバイト先は街はずれにある大きめのガーデニングショップだ。
会計や植物の手入れや掃除が主な仕事だというけれど、土や肥料の入った大袋なんかも抱えるだろうし、体力がいる。


「言いにくい話かもしれないけど、お金のことだったら」


ママが言いかけると、木蓮は「それだけじゃないんです」と言う。


「やってみたいんです。知らないひとたちの中にひとりで入って、初めてのことを」


このことは聡子さんも了承済みだと聞き、あたしたちはもう頷くしかなかった。

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