木蓮ひらり

鳥雲 /4


外に出ると空は明るさを増していた。

あたしたちは本通りへ出て東に向かって歩いた。

小さな飲食店やお土産屋さん、文房具屋さんや薬屋さんを通り過ぎたところの角から右手を向くと仏具屋さんが見える。


「あのお線香、あそこで?」

「うん、そう」


そのとき、お店から出てきた仏具屋のおじさんがこちらを見て「おう」と言った。


「こんにちは」

「こんちは。友だちかい」

「彼氏だよ」


私が答えると、おじさんは眉を上げて「ほう」と言い、ヒデちゃんは「こんにちは」と頭を下げた。


「男前だ」

「うん」

「トモちゃんをよろしく。仲良くな」

「あ、はい」


ヒデちゃんはもう一度ぺこりと頭を下げる。

おじさんは郵便受けから手紙を取ると「またおいで」と言ってお店に戻っていった。

あたしは酔っ払いを見る機会が多いせいもあって「おじさん」ってちょっと苦手なんだけど、仏具屋のご主人はあっさりしていて嫌いじゃない。

もう少し先にはパン屋さんがあって、あたしたちはそこで適当なものを買って公園に行くことにした。

ママがこの町に来た頃からちょっと古びていたという、おしゃれでもなんでもない、ふつうのパン屋さんだ。

最近はシティーホテルの一階に綺麗なベーカリーが出来てそちらに行くひとも多いけれど高校生が買うには高い。

その点このパン屋さんは値段のわりにボリュームがあって良心的だと思う。

引き戸を開けて店内に入ると「いらっしゃい」と言いながら奥から出てきたおばさんが、あたしの顔を見て「あら」と言った。

最近はこのパン屋に来てもご主人とアルバイトのひとしか見ていなかった。

おばさんはお久しぶりの挨拶を交わしたあとに「入院してたの」と言った。


「知らなかったー」

「もう年だわー。そういうこともあってね、来月で店を閉めるのよ」

「えっ」


おばさんは店を畳んだあと、ご夫婦で県外の息子さん一家と同居すると言った。


「そちらボーイフレンド?」

「あ、はい。こんにちは」


ヒデちゃんが答えて軽くお辞儀をした。

あたしがぼんやりしている間にトングやトレイも取ってくれている。


「お似合いね。いいわ。若いひとは未来がいっぱい」


おばさんは笑ってそう言う。

あたしはスパゲティのドッグ、ヒデちゃんはコロッケバーガーを買った。

おばさんは小さなドーナツをひとつずつ、おまけしてくれた。

0
  • しおりをはさむ
  • 208
  • 3
/ 365ページ
このページを編集する