木蓮ひらり

鳥雲 /6

外に出ると、雨は止んでいた。

寮の門限までにはまだ間がある。

あたしとヒデちゃんは回り道をしながらバスターミナルに向かった。

古びた旅館やシャッターの閉まった飲食店が立ち並ぶ通りを抜け、本通りを横切り、一本奥に入ると風車の形の看板が見える。

もう点滅することはないだろう「ムーランルージュ」のネオンサインは、近づいて見ると金具の錆が目についた。


「……これなんだね」


一瞬立ち止まったヒデちゃんがそう言って、杉本くんにどれだけのことを聞いているんだろう、とあたしは思う。


「木蓮は、用がない限りはここを通らないようにしてるみたい」


ヒデちゃんは、うん、と頷いてまた歩き出した。

あたしも隣で歩調を合わせる。


「早くヒデちゃんの町に行きたい」


木蓮は杉本くんの町を訪ねた後、杉本くんから距離を置いたけれど。


「この目で見たいの。感じたいの」


ヒデちゃんの町の光を、影を、匂いを。


「来なよ、絶対」


ヒデちゃんが、繋いだ手に少し力を込めた。

その町を知った後に、あたしは変わるんだろうか。

どんな風に?




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