木蓮ひらり

木蓮 /2


春分の日は良く晴れて、空は薄水色に霞んでいた。

木蓮は今日誕生日なんだけど、祝日だから早番でバイトに入っている。

二時には上がるというから、それに合わせてあたしはあとりうむを訪れた。

ママにお昼ごはん代をもらっているから、それで木蓮と何か食べて、それから本通りのお菓子屋さんで予約していたバースデーケーキを受け取る。
木蓮にはそう伝えてある。

少し早めに着いたら、木蓮はお客さんの車に鉢植えを積み込むのを手伝っているところだった。

あたしに気づくと木蓮は、ちょっと待ってて、という感じで無言で微笑んだ。

載せる植木はいくつかあるみたいだ。


「お、いらっしゃい。こないだはありがとう」


店長さんに声をかけられて、あたしは「こんにちは」と頭を下げた。


「ハナさんはお元気ですか?風邪とかは……」

「うん、大丈夫だった。さっきおふくろと一緒にここに来たんだよ。木蓮ちゃんを見たら『おっ』なんて言ってさ。一度会っただけで顔覚えたのかな」


木蓮は前にもハナさんを助けたことを言っていないんだ。

あたしは以前、木蓮が杉本くんと二人でハナさんが落とした名札をつけてあげたことを話した。


「そうかあ。なんか、らしいなあ、ハナも、瀬田ちゃんも」


店長さんはそう言って笑う。


「その、瀬田ちゃんのボーイフレンドにも会ってみたいなあ」

「ボーイフレンドっていうのか、わかんないですけど」


木蓮は植木鉢を積み終わってお客さんを見送った後、水道で手を洗っている。

そろそろ退勤できるんだろう。


「瀬田ちゃんちも、いろいろあったみたいだなあ。うちもあるけどな。うまくいかないときは全部ハナのせいみたいな気がして投げ出したくなったり、ハナのおかげで頑張って来られたなって思い直したり、その繰り返しさ」


そんな話を店長さんは笑顔でしている。


「瀬田ちゃんが最初に来たとき、ちょっと心配だったんだよ。細いし、顔も青白いし、声も小さくてね。でも元気になってきたよね。いい感じだ」


上着を着替えた木蓮が自分の荷物を持って奥から出てきた。


「店長、お先に失礼します」

「うん。瀬田ちゃん、前にもハナがお世話になったんだって?」


目を見開いた木蓮に、店長さんはあたしがさっき話したことを言った。


「その彼にもお礼言っといてよ」


店長さんに言われて「えっ」とか「うっ」とか呻いている木蓮の代わりに、あたしが「わかりました!」と返事をして、木蓮とふたり、お辞儀をしてから店を出た。

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