木蓮ひらり

あの日 /2


暮れ始めた街には、まだ観光客の姿は見えない。

旅館で夕食前の一風呂を浴びてでもいる頃だろう。

あたしのうちも木蓮のうちも開店の準備を始めている時間帯だ。



木蓮のうちのことが気にかかる。

この時間だと、木蓮のお父さんはまだ酔ってはいないだろうけど。




本通りを少し歩いて北側の細い道に入るとすぐに「ダイニングバーKazusa」の看板が見える。

大きな荷物を持っているから、勝手口からは入りにくい。

そう思って「準備中」の札が掛かった店の引き戸に手を掛けてみた?、予想通り鍵が開いていた。



「いらっしゃいませ!」


カウンターの中で仕込みをしていたらしいママが、威勢のいい声をあげた。


「ただいまあ」

「おう、おかえり。早かったね。どうだった、北海道」

「広かったー」

「あはは!そりゃそうだろ。着替えといで。ごはんにしよう」



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