木蓮ひらり

おたんこなす /1


木蓮がじょうろに水を入れている。


じょろじょろと音をたてて水が溜まっていくから、じょうろというのかな。


あたしがそう言うと木蓮は「そうかも」と真面目な顔をして言った。


昨日まで木蓮の足首にあった湿布は、もうない。


木蓮は普通に歩いて花壇の隅から隅まで丁寧に水を撒いていく。


試験前だから部活は休みなんだけど、植物は生き物だから園芸部の水やり当番は休めない。


あたしが水をやるわけじゃないけれど、早く梅雨入りすればいいのにと思う。



「ごめんね。退屈でしょう」

「そんなことないけど」

「エリナとサエは?」

「デート」



エリナには彼氏ができたらしい。

サエにも、まだ恋人未満だというけれど仲良くなった男の子がいるらしく、今日はどちらのカップルも図書館でお勉強だ。



日曜日以来、木蓮はヒデちゃんのことを話題にしない。


気を使ってくれているのかたまたまなのかはわからないけれど、あたしにはありがたいことだ。


あれからヒデちゃんとは連絡をとっていない。


やっぱり、しんどい。


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