好きには、なれない 【完】



いつ以来かな。


地上3階、地下1階の藤原邸を訪れるのは、ずいぶん久しぶりのような気がする。


「瞳お嬢様が当家を訪れるのは、1年半ぶりでございますね」


わたしの心の声が聴こえるのか、宮川さんは……


「昨日ご連絡をいただいてから、わたくしをはじめ当家の使用人たちは、瞳お嬢様の訪れを楽しみにしておりました。とくにわたくしの妻などは瞳お嬢様の信奉者ですから ―― 噂をすれば」


藤原家のエントランスにつづく階段から、ひとりの女性が降りてくる。


やや、ぽっちゃり系。


「瞳お嬢様、お久しぶりでございます。まあ、まあ、大変お美しくなられて……さあ、どうぞお入りくださいませ」


満面の笑みで出迎えてくれた女性は、藤原家の家事全般を取り仕切るメイド長であり、宮川さんの奥さんである圭子さん。


わたしのことを藤原家の奥様といっしょになって、幼いころからとても可愛がってくれる。


それはもう、熱烈に。




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