好きには、なれない 【完】

天空の時計 /見届ける人



月曜日の1時間目は、英語の授業。


智の祝福の助けにより、語学堪能なわたしは授業そっちのけで昨夜の記憶を辿っていた。


しかし、lost memory ...... 記憶がない。


正確に云えば、山荘を出たあたりからの記憶がひどく曖昧で、目が覚めたら自分の部屋で朝を迎えていたという有様。


前世でいったら、泥酔したあとの翌日、ひどい二日酔いと共に目を覚まし、いったいどうやって家に帰ってきたのか皆目見当がつかないという、1番やってはいけないパターンだ。


今朝の朝食の席で、麗一郎お兄様はクスクス笑っていた。


「帰りの車に乗るなり、瞳はすぐに寝たよ。びっくりするくらいの熟睡ぶりだった」


その車に乗った記憶さえないのだから恐ろしい。


さすがにちょっと心配になる。


これってもしかして……


「 dimentia 」


授業中だというのに思わず口にだしてしまった。


わたしの独り言に反応したのは、相変わらず何もない机で頬杖をついていた冬也くん。


「ディメンティア ―― っておい、ダレが認知症だって?」



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