好きには、なれない 【完】




ひとりになった堕天使は、神が消え去った空虚を見つめていた。


主神である青年に対して、後悔も懺悔もない。


それは本心だった。


ただ、罪の意識があるとすれば……それは神にではなく、己の本懐を遂げるために、利用するしかなかった彼女に対してだ。


彼女は知らないだろう。


彼女を守護する役目で堕天した天使が、じつは最愛の人と再会する目的しか持っていなかったということを。


最愛の人の魂をいかに傷つけずに、故意ではなく偶然という形で「赤城麻友子」までたどり着けるか。


孫である永井冬也を利用することも考えたが、それはあまりに直接的すぎた。


己の計画が早々に天界にバレる可能性を考えると、迂闊に近寄ることはできなかった。


そのために、星野瞳を利用した。


【運命の相手】


だいそれた呪いを与え、彼女の行動を制限すれば、幼なじみの「相馬 光」として、じっくりと彼女のそばで麻友子に接触する機会をうかがうことができる。


結果として、想像以上に早く「麻友子」と会うことができた。


誤算としては、孫の冬也が彼女に好意を示していることだ。


判らなくもないが、あの鬼がそばにいる限り、前途多難としか云い様がない。


「悪いな……恨んでくれてかまわない」


誰に向けて謝っているのか。


堕天使は、闇に向かってつぶやいた。




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